宇多田ヒカル「Fantôme」レビュー。全米iTunesランキング3位の快挙!

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宇多田ヒカルが「人間」になって帰ってきた。

「人間活動に専念するため」という理由で2010年に音楽活動を休止した宇多田ヒカルが、「HEART STATION」以来、8年ぶりのオリジナル・アルバムとなる「Fantôme」とともに帰ってきた。

世界31ヵ国でランクイン、25ヵ国・地域でBETS20入り、18ヵ国・地域でTOP10入り、全米iTunesチャートでは最高3位にランクイン(日本人女性アーティストとして初の”快挙”)するなど、国内外でチャートを席巻している。

かつて、一人の少女が歌った「Automatic」という曲が街に流れたとき、なんなんだーこの曲は!!と誰もが衝撃を受けた。そして、それまでの音楽業界の流れを一変させた。

「天才」、「怪物」、「革命」、いろいろ言葉が飛び交う中、アルバムは800万枚のセールスを記録した。

それから、彼女が出す曲はすべてが話題になり、売れ、街に溢れた。

わずか十代の少女はスーパースター、カリスマになり、普通の十代であれば経験するであろう”青春”を失った。
そして突然の活動休止宣言。「人間活動に専念する」。彼女は表舞台から姿を消した。

そして「人間活動中」に起きた様々な出来事・・・。

それを乗り越え、満を持してリリースされたアルバムが「Fantôme」である。

どこかしら「覚悟」のような思いが感じられる曲でアルバムは始まる。

『道』

黒い波の向こうに朝の気配がする
消えない星が私の胸に輝き出す
悲しい歌もいつか懐かしい歌になる
見えない傷が私の魂彩る

転んでも起き上がる
迷ったら立ち止まる
そして問う あなたなら
こんな時どうする

私の心の中にあなたがいる
いつ如何なる時も
一人で歩いたつもりの道でも
始まりはあなただった
It’s a lonely road
But I’m not alone
そんな気分

調子に乗ってた時期もあると思います
人は皆生きてるんじゃなく生かされてる

目に見えるものだけを
信じてはいけないよ
人生の岐路に立つ標識は
在りゃせぬ

どんなことをして誰といても
この身はあなたと共にある
一人で歩まねばならぬ道でも
あなたの声が聞こえる
It’s a lonely road
You are every song
これは事実

私の心の中にあなたがいる
いつ如何なる時も
どこへ続くかまだ分からぬ道でも
きっとそこにあなたがいる
It’s a lonely road
But I’m not alone
そんな気分

このアルバムの中で、一番これまでの宇多田ヒカルらしい雰囲気の曲だと思って聴いていると、これが2曲目の「俺の彼女」で激変する。

そして3曲目が「花束を君に」。この曲に登場する『君』とは誰を指しているのだろう?僕は美しいメロディーの向こう側に涙を流しながら花束を持って微笑む姿が見えたような気がした。『君』とはもしかしたら亡き母のことなのだろうか。亡き母にささげる鎮魂歌。

『花束を君に』

普段からメイクしない君が薄化粧した朝
始まりと終わりの狭間で
忘れぬ約束した

花束を君に贈ろう
愛しい人 愛しい人
どんな言葉並べても
真実にはならないから
今日は贈ろう 涙色の花束を君に

毎日の人知れぬ苦労や淋しみも無く
ただ楽しいことばかりだったら
愛なんて知らずに済んだのにな

花束を君に贈ろう
言いたいこと 言いたいこと
きっと山ほどあるけど
神様しか知らないまま
今日は贈ろう 涙色の花束を君に

両手でも抱えきれない
眩い風景の数々をありがとう

世界中が雨の日も
君の笑顔が僕の太陽だったよ
今は伝わらなくても
真実には変わりないさ
抱きしめてよ、たった一度 さよならの前に

花束を君に贈ろう
愛しい人 愛しい人
どんな言葉並べても
君を讃えるには足りないから
今日は贈ろう 涙色の花束を君に

このアルバムには他のミュージシャンとコラボした曲が収録されている。そのひとつ『二時間だけのバカンス』featuring 椎名林檎。

非常に想像力を掻き立てる歌詞が並ぶ。曲調は椎名林檎のそれに近い。以前の宇多田ヒカルにこんな曲が書けただろうか?それとも椎名林檎とのコラボだから書けた曲なのか。いずれにしても大人の女性の非日常を思い起こさせる刺激的な曲だと思う。

確かに宇多田ヒカルは「人間」になって帰ってきた。
悲しみと覚悟と透き通った魂を纏った三十代の女性アーティストとして。